アップデート及び初期状態の確認

◆はじめに

前回の「KVMインスタンス作成」に続いて、Rocky Linux 9 サーバ構築手順の次のステップとして、システムの「アップデート」と「初期状態の確認」を行います。

◆環境情報

当ブログサイトを運用しているサーバは、「KAGOYA JAPAN」で提供されている「KAGOYA CLOUD VPS」を利用しています。

◆アップデート

・初期アップデートの実行

# dnf update

実行例:

# dnf update
'～ 中略 ～'
Total download size: 631 M
Is this ok [y/N]: y
'～ 中略 ～'
Complete!

自動実行オプション:

確認なしで自動実行する場合は、「-y」オプションを使用します。

# dnf update -y

◆初期状態の確認

・OSバージョン

redhat-releaseファイル

$ cat /etc/redhat-release
Rocky Linux release 9.4 (Blue Onyx)

出力の説明:

• Rocky Linux: ディストリビューション名
• 9.4: バージョン番号
• Blue Onyx: コードネーム

その他の確認コマンド

unameコマンド

$ uname -a
Linux marusrv.maruweb.jp.net 5.14.0-503.40.1.el9_5.x86_64 #1 SMP PREEMPT_DYNAMIC Wed Apr 30 17:38:54 UTC 2025 x86_64 x86_64 x86_64 GNU/Linux

出力の詳細説明:

• Linux: カーネル名（オペレーティングシステム名）
• marusrv.maruweb.jp.net: ホスト名（FQDN形式）
• 5.14.0-503.40.1.el9_5.x86_64: カーネルバージョン
  • 5.14.0: メインカーネルバージョン
  • 503.40.1: Red Hat/Rocky Linuxのパッチレベル
  • el9_5: Enterprise Linux 9.5 対応
  • x86_64: 64ビットアーキテクチャ
• #1: カーネルのビルド番号
• SMP PREEMPT_DYNAMIC: カーネルの特徴
  • SMP: Symmetric Multi-Processing（マルチプロセッサ対応）
  • PREEMPT_DYNAMIC: 動的プリエンプション機能
• Wed Apr 30 17:38:54 UTC 2025: カーネルのコンパイル日時
• x86_64 x86_64 x86_64: プロセッサアーキテクチャ情報
  • 1番目: ハードウェア名
  • 2番目: プロセッサタイプ
  • 3番目: ハードウェアプラットフォーム
• GNU/Linux: オペレーティングシステム

unameコマンドの各種オプション

個別の情報を確認する場合

$ uname -s    # カーネル名
Linux

$ uname -n    # ホスト名
marusrv.maruweb.jp.net

$ uname -r    # カーネルバージョン
5.14.0-503.40.1.el9_5.x86_64

$ uname -v    # カーネルビルド番号等
#1 SMP PREEMPT_DYNAMIC Wed Apr 30 17:38:54 UTC 2025

$ uname -m    # ハードウェア名
x86_64

$ uname -p    # プロセッサタイプ
x86_64

$ uname -i    # ハードウェアプラットフォーム
x86_64

$ uname -o    # オペレーティングシステム
GNU/Linux

hostnamectlコマンド

systemd環境でのホスト名とシステム情報を詳細表示します。

$ hostnamectl

出力例:

$ hostnamectl
 Static hostname: marusrv.maruweb.jp.net
       Icon name: computer-vm
         Chassis: vm
      Machine ID: 213xxxxxxxx14ecxxxxxxxx1dc4ea6xx
         Boot ID: 3d96xxxxxxxx4802xxxxxxxx36fcxxxx
  Virtualization: kvm
Operating System: Rocky Linux 9.5 (Blue Onyx)
     CPE OS Name: cpe:/o:rocky:rocky:9::baseos
          Kernel: Linux 5.14.0-503.40.1.el9_5.x86_64
    Architecture: x86-64
 Hardware Vendor: RDO
  Hardware Model: OpenStack Compute
Firmware Version: 1.16.3-2.el9

重要な情報：

• Virtualization: KVM環境で動作
• Operating System: Rocky Linux 9.5
• Architecture: x86-64
• Hardware Model: OpenStack Compute（仮想マシン）

各項目の説明:

基本情報

• Static hostname: 静的に設定されたホスト名（FQDN形式）
• Icon name: システムアイコンの種類（仮想マシンを示す）
• Chassis: システムの種類（仮想マシン）

システム識別情報

• Machine ID: システム固有の識別ID（/etc/machine-idに格納）
• Boot ID: 現在の起動セッション固有のID（再起動ごとに変更）

仮想化情報

• Virtualization: KVM（Kernel-based Virtual Machine）上で動作

OS情報

• Operating System: OSの名前とバージョン、コードネーム
• CPE OS Name: CPE（Common Platform Enumeration）形式でのOS識別名
• Kernel: カーネルのバージョン情報
• Architecture: システムアーキテクチャ（64ビット）

ハードウェア情報

• Hardware Vendor: ハードウェアベンダー（RDO = Red Hat OpenStack Distribution）
• Hardware Model: ハードウェアモデル（OpenStackの仮想マシン）
• Firmware Version: ファームウェア（BIOS/UEFI）のバージョン

/etc/os-releaseファイル

Linux標準のOS識別情報ファイル（systemd導入以降の標準）の内容を表示します。

$ cat /etc/os-release

出力例:

$ cat /etc/os-release
NAME="Rocky Linux"
VERSION="9.5 (Blue Onyx)"
ID="rocky"
ID_LIKE="rhel centos fedora"
VERSION_ID="9.5"
PLATFORM_ID="platform:el9"
PRETTY_NAME="Rocky Linux 9.5 (Blue Onyx)"
ANSI_COLOR="0;32"
LOGO="fedora-logo-icon"
CPE_NAME="cpe:/o:rocky:rocky:9::baseos"
HOME_URL="https://rockylinux.org/"
VENDOR_NAME="RESF"
VENDOR_URL="https://resf.org/"
BUG_REPORT_URL="https://bugs.rockylinux.org/"
SUPPORT_END="2032-05-31"
ROCKY_SUPPORT_PRODUCT="Rocky-Linux-9"
ROCKY_SUPPORT_PRODUCT_VERSION="9.5"
REDHAT_SUPPORT_PRODUCT="Rocky Linux"
REDHAT_SUPPORT_PRODUCT_VERSION="9.5"

重要な情報：

• ID_LIKE: rhel centos fedora（互換性のあるディストリビューション）
• SUPPORT_END: 2032-05-31（サポート終了日）
• VENDOR_NAME: RESF（Rocky Enterprise Software Foundation）

各項目の説明:

基本OS情報

• NAME: OS名
• VERSION: バージョンとコードネーム
• ID: OS識別子（小文字、スクリプトで使用）
• VERSION_ID: バージョン番号のみ
• PRETTY_NAME: 表示用の正式名称

互換性情報

• ID_LIKE: 互換性のあるディストリビューション（Red Hat Enterprise Linux、CentOS、Fedoraと互換）
• PLATFORM_ID: Enterprise Linux 9プラットフォーム

表示・デザイン情報

• ANSI_COLOR: ターミナルでの表示色（緑色）
• LOGO: ロゴアイコンの参照名

セキュリティ・サポート情報

• CPE_NAME: CPE（Common Platform Enumeration）識別名（脆弱性データベースで使用）
• SUPPORT_END: サポート終了日（約10年間のサポート）

組織・連絡先情報

• VENDOR_NAME: Rocky Enterprise Software Foundation
• VENDOR_URL: 開発組織のURL
• HOME_URL: 公式サイト
• BUG_REPORT_URL: バグ報告先

製品サポート情報

• ROCKY_SUPPORT_PRODUCT: サポート製品名
• ROCKY_SUPPORT_PRODUCT_VERSION: サポート製品バージョン
• REDHAT_SUPPORT_PRODUCT: Red Hat互換製品名
• REDHAT_SUPPORT_PRODUCT_VERSION: Red Hat互換バージョン

・ディスク容量

$ df -h --total

出力例:

$ df -h --total
Filesystem      Size  Used Avail Use% Mounted on
devtmpfs        4.0M     0  4.0M   0% /dev
tmpfs           1.8G     0  1.8G   0% /dev/shm
tmpfs           730M   17M  713M   3% /run
/dev/vda1        79G  3.1G   73G   5% /
tmpfs           365M     0  365M   0% /run/user/0
total            82G  3.1G   75G   4% -

コマンドオプション:

• df: disk free（ディスク容量表示）コマンド
• -h: human-readable（人が読みやすい形式でK, M, G単位で表示）
• --total: 全ファイルシステムの合計値を最下行に表示

列の説明:

• Filesystem: ファイルシステム名・デバイス名
• Size: 総容量
• Used: 使用済み容量
• Avail: 利用可能容量
• Use%: 使用率
• Mounted on: マウントポイント

各ファイルシステムの解説:

devtmpfs (/dev)

• 容量: 4.0MB
• 用途: デバイスファイル用の仮想ファイルシステム
• 特徴: RAMベース、デバイス管理用

tmpfs (/dev/shm)

• 容量: 1.8GB
• 用途: 共有メモリセグメント
• 特徴: プロセス間通信、高速アクセス

tmpfs (/run)

• 容量: 730MB、使用済み 17MB（3%）
• 用途: 実行時データ、PIDファイル、ソケットファイル
• 特徴: 起動時に作成される一時的なデータ

/dev/vda1 (/ ルートファイルシステム)

• 容量: 79GB、使用済み 3.1GB（5%）
• 用途: システム全体のメインストレージ
• 特徴: 仮想ディスク（KVM環境のvirtio-blk）

tmpfs (/run/user/0)

• 容量: 365MB
• 用途: rootユーザー専用の実行時ディレクトリ
• 特徴: ユーザーセッション管理

total (合計)

• 容量: 82GB、使用済み 3.1GB（4%）

◆確認のポイント

・正常な状態の確認項目

1. システムアップデート
   • エラーなく完了している
   • 最新のパッケージが適用されている
2. OSバージョン
   • Rocky Linux 9.x が正しく認識されている
   • カーネルバージョンが適切
3. ディスク容量
   • ルートファイルシステムに十分な空き容量がある
   • 使用率が80%以下であることが理想的
4. 仮想化環境
   • KVM環境が正しく認識されている
   • virtioドライバが動作している

◆次のステップ

システムのアップデートと初期状態確認が完了したら、次は以下の手順を実行します。

1. ユーザ作成及びsudo設定
   • 一般ユーザーの作成
   • 管理者権限の設定
2. SELinux無効化及び開発ツール設定
   • セキュリティ設定の調整
   • 開発環境の構築

これらの手順により、安全で運用しやすいLinuxサーバ環境の基盤が整います。